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地域活動事例早期気づき・即時フォローに向けて豊後高田市の、サロンを基点とする社会環境構築の取り組み

取材:2018年8月20日 豊後高田市役所

豊後高田市

大分県の北東部、国東半島の西側に位置する豊後高田市は、海と山の自然に恵まれ、昭和30年代の商店街の香り漂う「昭和の町」や、六郷満山(ろくごうまんざん)文化ゆかりの史跡など、豊富な地域資源を有しています。1年間(2016年12月~17年11月)の認知症サポーター養成者数は全国1位(人口5万人未満区分)。子育て・教育支援にも熱心で、4年連続の人口社会増(転入超過)となっています。

豊後高田市 提供

フォロー体制を整えたうえで
健康チェックを実施

大分県豊後高田市は2018年4月、認知症と共生するまちづくりのための調査事業を開始しました。本事業は、2017年に同市と市医師会、エーザイ株式会社の3者で締結した『認知症の方が安心して暮らせるまちづくり連携協定』に基づくものです。

同市の各地域には、近隣住民の誰もが気軽に集まれる場所として、現在101のサロンがあります。今回の事業は、そのうち15サロンの協力のもと、60~90歳代の約300人を対象に進められています。

調査事業の流れをに示します。最初に認知機能のチェック・嗅覚のチェック・フレイルのチェック・アンケートなどの健康チェックを実施。その後、3サロンずつ5つのグループに分かれ、①運動プログラム、②回想法、③口腔ケア、④料理教室、⑤通常のサロン活動(非介入:コントロール)を半年間(隔週)継続し、再度健康チェックを行うことで効果を検証します。

図:認知症と共生するまちづくりのための調査事業

豊後高田市 社会福祉課 提供

健康チェックの結果、認知機能の低下が疑われる人には、郵送および戸別訪問にてその旨を通知し、医師会の協力医療機関(千嶋病院・高田中央病院)への受診を促します。通知後、受診が確認されない場合には、保健師等が自宅を訪問して再度、受診勧奨を行います。

協力医療機関では、認知症やMCIではないか、あるいはうつ病による集中力や意欲の低下が原因ではないか、などを専門医が確認し、認知症やうつ病と診断した場合には治療を開始します。また、MCIレベルであってもサロン活動(自治体による予防施策)は継続されるため、受け皿は確保されます。介護保険サービスの対象ではないために孤立し、不安を募らせる“空白の期間”を解消できるわけです。

改善効果を知るための
認知機能チェックであることを説明

「今回、私たちが最も重点を置いたのは、参加していただく地域住民の方々に、認知機能チェックをなぜ行うのかをしっかり説明することでした」

本事業の事務局を務める同市社会福祉課の植田克己課長はこのように話します。参加者への説明が不足すると、認知症やMCIというレッテルを貼られるといった誤解を招いたり、点数が低い場合にショックを与えたりしかねません。

「頭や体の健康が、それぞれの活動によってどのように改善するのかを知るために、今の自分の状況を把握します。自分たちのためにチェックを受けてください、と事前にきちんとお話しました」

認知症の経過、認知症予防の重要性の説明に当たっては、健康増進課の保健師の意見を聞きながら、説明や説明図の文言、図の矢印の色や太さなど、誤解や無用の不安を招かないように慎重に検討しました。MCIについても、認知症に進む確率が高いこと、一方で原因となるリスク要因によって状況が保たれたり、回復することもあること1)を丁寧に説明しています。

事前説明と健康チェックは、住民健診や健康相談などで日頃から市民と接している保健師と、事務局の職員が協力して実施しています。

事前協議を繰り返す

協力医療機関の医師の参加も含め、事業開始前の協議を合計で「20回ではきかない」(植田課長)くらい頻繁に行いました。介入プログラムの検討も重ね、医師たちの積極的な提案により回想法と口腔ケアが加わりました。

参加状況を逐一確認する

各サロンの参加状況を毎回チェックし、休みがちな人には声をかけて参加を促しています。

それぞれの介入プログラムの効果を検証する再健康チェックは、2019年早々に実施の予定です。

「効果が具体的に示されれば、協力していただいた市民の方々に『参加してよかった』と実感してもらえますし、説得力をもってこうした予防活動を市内の全サロンに広げることができます」(植田課長)

1) 認知症疾患診療ガイドライン2017,「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会,p147, 2017, 医学書院

運動プログラム実施風景

豊後高田市 社会福祉課 提供

調査事業を1年間実施して

取材:2019年2月27日 豊後高田市役所

認知機能のチェックでMCIが疑われた人には、ショックを与えないように慎重に言葉を選んで文書で受診を勧めたのですが、「認知症と言われた」と捉えてしまう人もいました。世間一般の受け止め方は、認知症か認知症じゃないか、黒か白かでグレーの認識はあまりないようです。MCIの啓発、そしてMCIの段階でどのように過ごせば良いかの啓発は繰り返し繰り返し行わなければならないと、調査事業を1年間実施してあらためて感じました。

一方で、MCIについてしっかり理解してくれた人は進んで医療機関を受診し、「認知症じゃなかった。良かった」と電話をくれたりしています。事業に対するサロンの参加者の反応は良好で、これを機会にサロン活動が活発化している地域もあります。また、医療と市民をつなぐきっかけにもなりました。

豊後高田市 社会福祉課 課長の植田克己さん