ADの発病メカニズムとしては、最初にアミロイド前駆体蛋白(APP)からAβがモノマー(1量体)として切り出され、それが2個以上集まってAβオリゴマー、さらに数百個以上凝集して成熟線維が形成される。この老人斑ができる過程がトリガーとなり、次のカスケードとしてリン酸化されたタウが重合して神経原線維変化を形成し、さらに神経細胞障害を起こしてコリン作動性神経細胞を中心とする神経細胞死が生じる。このような病理学的背景のもと、正常認知機能からMCI、認知症へと進展していくのではないかと考えられている(アミロイド仮説)。
アミロイド仮説に基づき、①Aβ産生抑制、②Aβ分解促進、そして③毒性を発すると考えられるAβオリゴマーやAβ線維の形成を抑制するAβ凝集制御の3つのアプローチがとられている。
私はAβ凝集制御に着目し、チオフラビンT法を中心に実験を進めてきた。Aβがモノマーの段階でチオフラビンTを結合させ、445nmの光で励起しても変化は起きない。しかしAβが凝集して線維状の構造をとると490nmの光を発するようになる。したがって蛍光強度を測定することにより、Aβ凝集の度合いを把握することができる。われわれは、この実験手法を用い、ワイン関連ポリフェノール(ミリセチン等)がAβ線維の形成を抑制することを明らかにした1)2)。