不眠症について


不眠症は、睡眠障害国際分類第2版(The International Classification of Sleep Disorders, Second Edition:ICSD-Ⅱ)において、下記のよう定義されています。
睡眠の開始と持続、一定した睡眠時間帯、あるいは眠りの質に繰り返し障害が認められ、眠る時間や機会が適当であるにもかかわらずこうした障害が繰り返し発生して、その結果何らかの昼間の弊害がもたらされる状態。米国睡眠医学会: 睡眠障害国際分類
第2版, 医学書院, 1-2(2010)
ICSD-Ⅱでは、睡眠障害が8つのカテゴリーに分けられており、そのうちの1つに不眠症があります。不眠症は、さらに精神生理性不眠、不適切な睡眠衛生による不眠などの11の下位分類に分けられており、その様々なタイプの不眠症に共通する一般的基準として、次の基準が示されています。
- 入眠困難、睡眠維持困難、早朝覚醒、慢性的に回復感のない、質のよくない睡眠が続くと訴える。 子どもの場合は大抵保護者から報告され、就寝時のぐずりや1人で眠れないといった睡眠障害がある。
- 眠る機会や環境が適切であるにもかかわらず、上述の睡眠障害が生じる。
- 夜間睡眠の障害に関連して、以下のような日中障害を少なくとも1つ報告する。
- ⅰ)疲労または倦怠感
- ⅱ)注意力、集中力、記憶力の低下
- ⅲ)社会生活上あるいは職業生活上の支障、または学業低下
- ⅳ)気分がすぐれなかったり、いらいらする(気分障害または焦燥感)
- ⅴ)日中の眠気
- ⅵ)やる気、気力、自発性の減退
- ⅶ)職場で、または運転中に、過失や事故を起こしやすい
- ⅷ)睡眠の損失に相応した緊張、頭痛、または胃腸症状が認められる
- ⅸ)睡眠について心配したり悩んだりする
第2版, 医学書院, 1-2(2010)
不眠症は大きく分けると、眠れないこと自体が病態の原発性不眠と、何らかの原因によって不眠が引き起こされる続発性不眠に分類されます。
ICSD-Ⅱでは、不眠症の一般的基準を満たす不眠症群を11の下位分類に分けています。
臨床場面で汎用される慢性の不眠症(神経性不眠症、不眠恐怖症)は、ICSD-Ⅱの精神生理性不眠症(原発性不眠症)、逆説性不眠症、特発性不眠症を合わせた概念に相当し、米国精神医学会によるDSM-IV-TRにおける原発性不眠症と一致します。
- 適応障害性不眠症(急性不眠症)
- 精神生理性不眠症
- 逆説性不眠症
- 特発性不眠症
- 精神疾患による不眠症
- 不適切な睡眠衛生
- 小児期の行動性不眠症
- 薬物または物質による不眠症
- 身体疾患による不眠症
- 物質または既知の生理的病態によらない、特定不能な不眠症
(非器質性不眠症、非器質性睡眠障害) - 特定不能な生理的(器質性)不眠症
医学書院, 3-33(2010)