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頭痛の疫学

日本における片頭痛の疫学調査

わたしたちの国の頭痛の年齢分布や性別による有病率、症状の程度は、どのようになっているのでしょうか。

日本人を対象とした片頭痛の大規模な疫学調査は、過去に2回行われています。1990年の国勢調査による人口分布に、性別、年代、地域が一致した住民4,029例を抽出したSakai , Igarashi の調査と、鳥取県大山町の18歳以上の住民5758名に対する調査をしたTakeshima らのものです。二つの調査では、ほぼ同様の結果が示されました。

ここでは、Sakai , Igarashi の調査報告をもとに、日本の片頭痛の実態を見ていきます。片頭痛の疫学を知ることで、正しい診断を行うための一助としてください。

頭痛の有病率

国際頭痛分類(ICHD-II)の診断に基づいて実施された、Sakai , Igarashi による大規模調査の結果についてご紹介します。1)

対象:
日本全国から無作為に抽出した15歳以上の住民4,029名
方法:
全国(沖縄を除く)の電話帳から無作為に38,779件に電話をかけ、1990年の国勢調査による人口分布に性別、年代、地域が一致した4,029件を抽出

有病率

Sakai , Igarashi による調査では、国際頭痛学会(IHS)の診断基準をすべて満たす片頭痛の有病率は6.0%、片頭痛と考えられながら、1項目のみ満たしていないもの(疑診例)を含むと8.4%、日本の人口を約1.3億人とすると実に1千万人以上の日本人が片頭痛を発症しているということが分かりました(図1参照)。

また、緊張型頭痛の有病率を見ると、緊張型頭痛の15.6%に疑診例の6.8%を含めた22.4%のうち、日常生活への支障度が少ない「反復発作性緊張型頭痛」の有病率は20.6%、支障度、受診率ともに高い「慢性緊張型頭痛」は1.6%の有病率であるという報告がなされています。 群発頭痛の有病率は不明で、報告によりばらつきがあるものの、人口10万人あたり56〜401人という統計が出ています。

男女差

性別に片頭痛の有病率を見てみると、全体の8.4%に対して、男性が3.6%、女性が12.9%で、女性が男性の3.6倍もの有病率であることを示しています。緊張型頭痛の有病率も男性18.1%に対して女性26.4%と女性が男性に対して有病率が高い傾向にあることが分かります。これに対して群発頭痛の男女比は、5:1〜6.7:1で、男性に多いことがわかっています。

年代

年代別では、片頭痛、緊張型頭痛とも男性は20〜30歳代、女性は30〜40歳代の有病率が高く、就労年齢層の割合が多い傾向があります(図2参照)。群発頭痛についても、発症年齢は20〜40歳代が多いといわれています。

病型別

片頭痛のタイプ別に有病率を見てみると、前兆のない片頭痛は男性が2.1%、女性が9.3%、前兆のある片頭痛は男性1.4%、女性3.6%という調査結果が出ており、前兆のない片頭痛が女性に多く見られることが分かります。前兆のない片頭痛は月経との関連も指摘されており、女性ホルモンの影響も考えられています。

発作頻度

Sakai , Igarashiによる片頭痛の発作頻度の調査では、1ヵ月の発作回数は平均2.1〜3.1回、1回の発作での持続時間は、9.3〜7.6時間であるという結果が報告されています。片頭痛が日常生活に及ぼす影響を見ると、「いつも寝込む」4%、「ときどき寝込む」30%、「寝込まないが支障大」40%と、実に74%が日常生活に影響を受けています。とくに女性は男性に比べて、支障の度合いが大きいという結果も出ています。

誘発因子

片頭痛の誘発因子としては、「睡眠不足」71.1%、「頸・肩の凝り」67.1%、「旅行・外出」65.3%、「過労」52.9%、「目の疲れ」44.5%、「緊張」43.6%、「睡眠過多」27.6%などが挙げられました。また、チョコレートや赤ワインなどの特定の食品により頭痛が誘発されたとする人は極めて少数でした。

有病率の国際比較

片頭痛の有病率を地域別に見ると、日本の8.4%に比べ、欧米は10〜15%と高いことが分かります。その要因としては、人種差、地域差(緯度や気温差など)、生活習慣(食事、飲酒、喫煙、睡眠など)の違いがあるのではないかと推察されています。

頭痛には明確な診断基準があるとはいえ、その診断は患者さんの自己申告、記憶再生といった主観的訴えに頼る割合が高いため、診断基準の解釈の違いが起こりうるという指摘もあります。例えば、Sakai, Igarashiの日本での調査では、中程度の頭痛を持つにも関わらず頭痛を我慢しながら仕事や学業、家事、個人的な付き合いなどの日常生活を過ごす割合が64%、欠勤や休業など、社会生活に支障をきたした割合は32%に過ぎないことが分かりました。これに対し、デンマークの調査では、片頭痛を持つ被雇用者の43%が過去1年間に頭痛が原因で1日以上仕事を休んでいたという報告があります1)

表1:IHS診断基準による片頭痛有病率の国別比較 2)〜18)

  報告者 調査実施国 対象年齢 対象期間 有病率(%)
男性 女性 全体
Rasmussen,et al.(1991) デンマーク 25〜64 1年間
生涯
5.9
8
15.3
25
10.4
16
Hagen, et al.(2000) ノルウェー 20〜 1年間 8 16 12
Dahlof,et al.(2001) スウェーデン 18〜74 1年間 9.5 16.7 13.2
Henry, et al.(1999) フランス 15〜 1年間 6.1 17.6 12.1
Gobel, et al.(1994) ドイツ 18〜 生涯 22 32 27.5
Launer, et al.(1999) オランダ 20〜65 1年間
生涯
7.5
13.3
25
33
Stewart, et al.(1992) アメリカ 12〜80 1年間 6 17.7 12.2
Stewart, et al.(1996) アメリカ 18〜65 1年間
白人 8.6 20.4
黒人 7.2 16.2
アジア人 4.2 9.2
Lipton, et al.(2002) アメリカ 18〜65 1年間 6 17.2
白人 6 18.2
非白人 6.6 14.9
不明 4.3 6.9
Pryse-Phillips, et al.(1992) カナダ 15〜 生涯 10 23 16.5
O'Brien, et al.(1994) カナダ(ケベック) 18〜 1年間 7.4 21.9 15
Lavados, et al.(1997) チリ 15〜 1年間 2 11.9 7.3
Sanvito, et al.(1996) ブラジル   1年間 11.3 21.8 16.1
Jaillard, et al.(1997) ペルー 16〜 1年間 2.3 7.8 5.3
Alders, et al.(1996) マレーシア   1年間 9
Cheung(2000) 香港 15〜 1年間 12.5
Wang, et al.(2000) 台湾(台北) 15〜 1年間 4.5 14.4 9.1
Roh JK et al.(1998) 韓国 15〜 1年間 20.2 24.3 22.3
Sakai & Igarashi(1997) 日本 15〜 1年間 3.6 12.9 8.4

片頭痛の受信状況

同じくSakai, Igarashiの調査によると、片頭痛患者の医療機関の受診率は、定期的に受診している2.7%、ときどき通院する12.3%、過去に通院したことがある15.6%。これらを足しても、片頭痛で受診したことがあるのは30.6%で、69.4%は一度も医療機関を受診したことがないことが分かりました1)

諸外国での受診率は24〜65%で、そのうち片頭痛と診断されるのは20〜50%程度と報告されています。アメリカの報告では10)、片頭痛をもつ人の69%は受診歴があります。女性だけを見ると73%で、男性49%と比べるとかなり高率であることがわかります。また、頭痛をもつ人のうちで、1度も受診したことのない人は31%で、その理由は、「不都合」(55%)、「有効な治療法がある」(47%)、などでした。さらに、過去に受診したことはあるが現在は受診していない人は21%で、理由は、「頭痛の強度や頻度の減少」(56%)、「有効な治療法あり」(43%)、「医師ができることがないと感じる」(41%)などでした。

薬剤使用率を見ると、全体を平均して56.8%が市販薬のみで対処しています。医師の処方薬のみを使用している人は5.4%、市販薬と医師の処方薬の両方を使用している人は18.6%で、薬を使用していない人は19.2%でした。アメリカの報告では10)、49%が市販薬のみ、23%が医師の処方薬のみ、23%が市販薬と医師の処方薬の両方を使用し、薬を使用していない人は5%のみであることが分かりました。

これらのデータから、日本人は諸外国に比べ、片頭痛に対する病識が乏しいと推察されます。適切な診断、治療により、頭痛はコントロールできる疾患であることを広く普及させる必要があります。

参考文献

1)
Sakai F,Igarashi H.Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia. 1997 ; 17 : 15-22.
2)
Rasmussen BK, et al:Epidemiology of headache in a general population : aprevalence study.J Clin Epidemiol 44 : 1147-1157,1991,
3)
Hagen K,Zwart JA, Vatten L, et al : Prevalence of migraine and non-nugraubiys headache-head-HUNT, a large population-based study. Cephalalgia 20 : 900-906,2000.
4)
Dahlof C , Linde M : One-year prevalence of migraine in Sweden : a population-based Study in adults. Cephalalgia 21 : 664-671 , 2001.
5)
Henry P, Michel P,Brochet B, et al : A nationwide survey of migraine in France : prevalence of migranie headache in adult. Cephalalgia 12 : 229-237 , 1992.
6)
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Launer LJ, Terwindt GM , Ferrari MD : The prevalence and characteristics of migraine in a population-based cohort The GEM study. Neurology 53 : 537-542,1999.
8)
Stewart WF, Lipton RB, Celentano DD, et al : Prevalence of migraine headache in the United States. JAMA 267 : 64-69, 1992.
9)
Stewart WF, Lipton RB, Liberman J : Variation in migraine prevalence by race. Neurology 47 : 52-59, 1996.
10)
Lipton RB, Scher AI, Kolodner K, et al : Migraine in the United States. Epidemiology and patterns of health care use. Neurology 58 : 885-894,2002.
11)
Pryse-Phillips W, Findlay H, Tugwell P, et al : A Canadian population survey on the clinical, epidemiologic and societal impact of migraine and tension-type headache. Can J Neurol Sci 19 : 333-339, 1992.
12)
O'Brien B, Goeree R, Streiner D : Prevalence of migraine headache in Canada : a population-based survey. Int J Epidemiol 23 : 1020-1026, 1994.
13)
Lavados PM, Tenhamm E : Epidemiology of migraine headache in Santiago, Chile : a prevalence study. Cephalalgia 17 770-777, 1997.
14)
Jaillard AS, Mazetti P, Kala E : Prevalence of migraine and headache in a high-altitudo town of Peru : a population-based study. Headache 37 : 95-101, 1997.
15)
Alders ES, Hentzen A, Tan CT : A community-based prevalence study on headache in Malaysia. Headache 36 : 379-384, 1996.
16)
Cheung RT : Prevalence of migraine, tention-type headache, and other headaches in Hong Kong. Headache 40 : 473-479, 2000.
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Wang SJ, Fuh JL, Young YH, et al : Prevalence of migraine in Taipei, Taiwan : a population-based survey. Cephalalgia 20 : 566-572, 2000.
18)
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