- Q1
アドバンスとプラスの解析結果は相関はあるのでしょうか?
- -A1-松田博史先生の評価では、相関があることは確認されています。ただ、個々の症例ではばらつきがありますので、同一バージョンで比較ください。
詳しくは、下図をご参考ください。また、解説シリーズ6に、アドバンスとプラスの違いの詳細が掲載されていますので、ご参考ください。
■アドバンスとプラスの解析結果の相関
- Q2
プラスで解析していた被検者の経過観察は行えないのでしょうか?
- -A2-行えません。アドバンスとプラスでは解析アルゴリズムが異なるため、結果に差がありますので、同一バージョンでの経過観察をお願いいたします。
- Q3
アドバンスはプラスと比較して低値傾向にでるのでしょうか。それとも高値傾向にでるのでしょうか。
- -A3-武蔵病院様のデータでは高値傾向に出ておりますが、評価実施施設様では低値傾向というケースもあり、一概に何れかとは申し上げかねる状況です。誠に恐れ入りますが、アドバンス結果同士で比較ください。
なお、参考データでの比較結果については、下図をご参考ください。解説シリーズ1にも掲載されています。
- Q4
アドバンスの値の目安はプラスと同様でしょうか。
- -A4-選択性を表す、萎縮比(VOI内/全脳) のみ、下記の通り変更になります。
0-5 ...選択性があるとはいえない
5-10 ...選択性が見られる
10- ...選択性が強い
参考データでの各指標の値の分布については、以下の頻度分布をご参考ください。解説シリーズ1にも掲載されています。
- Q5
アドバンスにすることで、気をつけなくてはいけないことはないのでしょうか?
- -A5-解析に失敗しても、解析結果からでは判断しかねるケースが多くみられます(脳全体が真っ赤にならないことが多い)。途中処理の組織分割結果をご確認いただくことが重要です。また、磁化率アーチファクトが灰白質の萎縮としてとらえられやすい傾向があります。
- Q6
自分でSPM8+DARTELで解析した結果と同一でしょうか。
- -A6-同一ではありません。より安定した結果が得られるように入力画像の解像度、角度、信号値分布などを一定にするための独自の前処理を行っているためです。
- Q7
VOI間萎縮比において白質の関心領域はどこに設定されているのでしょう?
- -A7-白質解析結果を確認する画面・レポートには関心領域は設定されていません。VOI間萎縮比解析結果画面・レポートでは、背側脳幹に設定されています。
- Q8
なぜ白質解析結果に関心領域はないのでしょうか?
- -A8-白質解析結果のみを用いて特定の疾患での使用を推奨するものではないため、特定の関心領域はご用意しておりません。
- Q9
白質評価が有用な疾患はどのようなものがあるのでしょうか?
- -A9-認知症を呈する変性疾患での有用性が期待されています。しかし、T1強調像の白質萎縮を評価するため、慢性虚血性白質変化(T2強調像、FLAIR像で確認できるもの)は評価困難です。
- Q10
解析結果画面に表示される各値の呼び方がプラス版と違うのですが、算出方法が変わったのでしょうか。
- -A10-各値の算出方法自体は変更ありません。ただ、プラス
とは解析アルゴリズムが異なるため、同じ結果が得られないことを明示するため、各値(指標)の名称を変更しました。
- Q11
解析結果画面の下方に表示されている表はどのようにみればよいのでしょうか。
- -A11-関心領域に関する左右別の値(「4.萎縮比(VOI内/全脳)」を除く)、関心領域内の最大値を表示していますので、参考指標としてお使いください。
- Q12
最大値は何か意味があるのでしょうか。
- -A12-「VOI内萎縮度」は関心領域内全体の平均的な萎縮度合いを表すのに対して、「VOI内最大値」は関心領域内の中でもさらに局所的な一部分に強い萎縮がある場合に高い値となります。
- Q13
解析結果画面に「check segment results!」というメッセージが表示されているのですが、何を意味しているのでしょうか。
- -A13-途中処理の組織分割の灰白質抽出に失敗している可能性があることを示しています。組織分割結果をご確認ください。
なお、白質抽出失敗のアラートは表示されません。
- Q14
レポートに「check segment results!」というメッセージが表示されているのですが、何を意味するのでしょうか?
- -A14-途中処理の組織分割の灰白質抽出に失敗している可能性があることを示しています。組織分割結果をご確認ください。
- Q15
途中処理に失敗していないのに、「check segment results!」というメッセージが複数症例で表示されます。非表示にする設定方法を教えてください。
- -A15-メニューから[ツール]→[処理結果表示設定]
を開き、組織分割エラー認識設定の「エラー判定閾値」の値を大きくするとエラーと判定する感度が下がり、このメッセージが表示されにくくなります。
さらに「エラー判定を実施する」のチェックを外すとメッセージが非表示になります。
- Q16
アドバンスでは、なぜ脳表が別ウィンドウで表示されるようになったのでしょう。
- -A16-アドバンスは、脳表とスライス一覧表示で表示アルゴリズムが異なるためです。
- Q17
脳表の萎縮部位と増加部位の同時表示ができません。
- -A17-アドバンス
では脳表の同時表示は行えません。これは、アドバンスはプラスと表示アルゴリズムが異なり、原理上に同時表示が困難となったためです。
具体的には、プラスは脳表から12mmの範囲の平均値を表示していましたが、アドバンスでは感度向上のため脳表から16mmの範囲の最大値を表示しています。そのため、低下部位(正の最大値)と増加部位(負の最大値)の2つの最大値が存在し、これらを一度に表示することが原理上できないためです。
- Q18
脳表の萎縮範囲がプラスと比較しかなり狭くなっているのですが、なぜでしょうか?
- -A18-アドバンスはプラスと比較し、脳表の萎縮評価がより局所的に表示されるため、表示範囲が狭くなるケースがあります。
- Q19
被検者脳で「被検者脳照合」というタブがあるのですが、これはどのような機能なのでしょうか?
- -A19-被検者の元MRI画像と、Zスコアマップ(「ブイエスラド」の萎縮表示)を同時に確認できる機能です。
- Q20
1.5Tと3TのMRI画像をアドバンスで解析した際、解析結果に相関はあるのでしょうか?
- -A20-評価中のデータでは、アドバンスの灰白質評価指標を示す4つの値で相関があることが確認されています。とくに、「(1)VOI内萎縮度」において、強い相関が確認されています。
- Q21
灰白質の解析結果は1.5Tと3Tで相関があるということですが、白質については相関がないということでしょうか?
- -A21-白質全脳萎縮領域の割合については、評価を実施していません。
- Q22
1.5Tで解析していた被検者の経過観察は行えないのでしょうか?
- -A22-1.5Tと3Tでは解析結果も異なるため、経過観察には同一の磁場強度をご使用ください。
やむを得ず1.5Tと3Tで経過観察をする場合は、施設様ごとの傾向を算出いただいたうえでご使用いただくことを推奨します。
なお、評価データでは、「(1)VOI内萎縮度」は3Tで低めに出る傾向があり、「(2)全脳萎縮領域の割合」は3Tで高めに出る傾向がありました。
- Q23
何れの解析結果指標でも、3Tで高値または低値という傾向があるようですが、具体的にはどの程度異なるのでしょうか?
- -A23-1.5T MRI画像と比較した、3T MRI画像における解析結果数値は、以下のような傾向があります。
VOI萎縮度 一割弱低値傾向
VOI萎縮割合 一割強低値傾向
全脳萎縮割合 二割強高値傾向
萎縮比 三割強低値傾向
3T MRI 画像での傾向に関する考察
評価時の検討において、1.5T MRI画像と3T MRI画像の灰白質画像で paired-T test
を実施したところ、視床など正中部では3Tの灰白質密度が高く、前頭葉皮質では3Tの灰白質密度が低くなる結果が得られました。
この結果より、「ブイエスラド」の解析結果数値としては、「(1)VOI内萎縮度」「(3)VOI内萎縮領域の割合」は前者の影響で低く、「(2)全脳萎縮領域の割合」は後者の影響で高く、また「(4)萎縮比(VOI内/全脳)」は前者・後者の影響が同じ方向に働いて大幅に低くなると考えられます。
※1.5T MRI画像の解析を前提とした、あくまで目安であり、個々の症例では該当しないこともあります。
(資料提供:国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター 松田博史
- Q1
脳表表示を行うために、なにか設定は必要でしょうか。
- -A1-必要ありません。常に脳表が表示されます。
- Q2
脳表の解析結果は何を反映しているのでしょうか?
- -A2-Zスコアマップが元々持っている処理結果情報を脳表画像にマッピングしたものが脳表表示となります。
- Q3
脳表の見方がわかりません。
- -A3-大脳皮質の情報(萎縮)をみるための機能です。若年発症のADでは海馬傍回付近よりも帯状回後部から楔前部および頭頂側頭葉皮質の萎縮が優位なことがあり、そのような場合の参考となります。なお、大脳皮質全体の萎縮状態を捉えることに優れますが、内側側頭部(海馬傍回付近)の情報はみえにくいため、スライス断面表示もあわせてご確認ください。
- Q4
プラスの脳表表示では脳表から12mmの範囲が表示されるということですが、なぜ12mmなのでしょうか。
- -A4-プラスは平滑化処理を各ボクセル12mmの範囲で行っているため、その最小単位である12mmで表示しております。
- Q5
被検者脳表示に関心領域が表示されません。
- -A5-被検者脳表示における萎縮表示は、処理の都合上、実際の萎縮より広範囲に表示されます。関心領域を被検者脳に合わせるためには同様の処理が必要となり、正しく合わせることが困難なため、関心領域表示は行っておりません。
- Q6
被検者脳表示の画像は実際に被検者の脳MR画像と考えてよろしいのでしょうか。
- -A6-正しくは、「ブイエスラド」で処理するために再構成された画像です。しかし、これはMRI装置における再構成と同義であり、ボクセル等大化処理をしても被検者のMR画像として読影するための情報は保持されており、被検者脳と考えていただけます。
- Q7
被検者脳表示は何に使えるのですか。
- -A7-「ブイエスラド」の処理結果(萎縮表示)を評価するにあたり、実際の被検者MR画像に立ち返ってみることがきます。但し、萎縮表示は実際の萎縮よりも広く出ることにご留意ください。
- Q8
被検者脳表示をしましたが、萎縮表示されている部分に色がついているため、実際の萎縮があるのか確認できません。
- -A8-萎縮表示の色は、透過率を調整できます。透明化の透過率をあげてご確認ください。
- Q9
被検者脳表示のaxial断面の角度は標準脳表示のaxial断面の角度と違うように見えます。
- -A9-標準脳表示のaxial断面の角度は、AC-PCラインに水平としております。一方被検者脳表示ではsagittal面に直行の断面となりますので、入力画像がAC-PCラインに水平となっていないと、断面角度は異なります。なお、線形変換後の被検者脳表示では、線形変換後のsagittal面に直行のため、標準脳表示とほぼ同じ角度の断面とになります。
- Q10
自動補正フローを行った場合、前のバージョンと解析結果は変わらないのでしょうか。
- -A10-解析結果は若干変わります。そのため、前のバージョンと結果をまとめたり、縦断的に評価する場合は、標準フローを選択ください。
- Q11
自動補正フローでZスコアが高値になるのはなぜでしょうか。
- -A11-基本的に標準フローでお願いします。
自動補正した場合にZスコアが高値となる傾向となる理由につきましては、現状、理論的な説明は困難です。しかし若干高値とはなりますが、標準フローと非常に高い直線相関が得られております。
ただ標準フローと自動補正フローで値が変わるため、あくまで標準フローで処理できなかった画像を救う機能として、自動補正フローの利用を推奨しております。
- Q12
灰白質抽出結果をみてください、と言われますが、灰白質抽出のどこを確認すればよいのでしょうか。
- -A12-側脳室前後(初期設定で表示される部分)のスライス画像を中心にご確認ください。
- Q13
「関心領域内の萎縮の程度」が0となるのですが、0という結果はありえるのでしょうか?
- -A13-Zスコアは「正の値を取っている(健常者と比較して相対的に萎縮と評価された)ボクセルの平均値」ですので、「0」という処理結果は、これは関心領域内のZスコアがすべて0より小さい(関心領域内がすべて相対的に増加している)というケースが考えられます。
関心領域から離れた部位に強い萎縮がみられる場合など、関心領域付近が相対的に増大とみなされる場合などで起こります。
- Q14
容積の増加は見ることができるのでしょうか。
- -A14-物理的に増加という意味では無く、脳全体の平均に対し、相対的に萎縮しているか増加しているかを見ております。
- Q15
容積増加を見る意味(臨床的意義)はあるのでしょうか。
- -A15-ADを識別するという観点において、増加部位をみる必要はありません。脳全体の平均に対し、相対的に萎縮している領域と増加している領域を確認することができます。
- Q16
DICOMファイル名のフォルダが見つからず、解析結果がどこにあるかわかりません。
- -A16-出力ファイル名の初期設定では、DICOMファイルからPatientIDや氏名、撮像日の情報を取得し、「yyyymmdd_PatientID_Name」という処理結果フォルダが作成されます。(DICOMファイルからPatientID、氏名の情報が取得できない場合は、ファイル名と同じ名前のフォルダが作成されます。)
- Q17
読み込んだ解析結果が、プルダウンに残っています。
- -A17-ツールバーの「×」マークを押下するか、メニューバーから[表示]→[ファイル名]→[閉じる]を選択していただければプルダウンから削除できます。
- Q1
「ブイエスラド」の結果でADと診断しても良いのですか?
- -A1-「ブイエスラド」の結果で診断はできません。AD診断の基本は「症状と経過」です。画像診断は補助診断であり、診断においては、臨床情報をもとにした医師の総合的な診断が必要となります。
- Q2
「ブイエスラド」で「VOI内萎縮度」(または「関心領域内の萎縮の程度」)が2に近かったらADと診断して良いのですか?
- -A2-内側側頭部の萎縮だけではADと診断することはできません。ADの診断は神経心理学的検査を含め、臨床情報をもとにした医師の総合的な診断が必要となります。
- Q3
ADを早期に見分けることができるのですか?(ADの「VOI内萎縮度」(または「関心領域内の萎縮の程度」)の目安は?)
- -A3-ADでも、内側側頭部に萎縮がみられることは多いと言われていますが、一方で若年ADの場合は、後部帯状回~楔前部および頭頂側頭葉皮質の萎縮が出やすいという報告もあります。各施設で症例を蓄積してご確認をお願いいたします。
- Q4
「VOI内萎縮度」(または「関心領域内の萎縮の程度」)の値で重症度もわかるのですか?
- -A4-現在のところ臨床的な重症度との相関につきましてはエビデンスがありません。
松田博史先生の報告によると、縦断的に見た場合には値と重症度の相関が期待できますが、横断的に見た場合にはゆるやかな傾向が見られる程度であり、値そのもので重症度を判断することは困難です。
- Q5
「ブイエスラド」により、ADと他の疾患の鑑別は行えませんか?
- -A5-「ブイエスラド」のみで別の疾患との鑑別はできません。「ブイエスラド」の処理自体は全脳(灰白質・白質)に対し行っており、全脳における灰白質・白質の萎縮程度を確認することができますので、総合的な画像診断の支援情報としてお役立てください。
- Q6
Zスコア解析結果表示上の、「その他の解析結果(参考)」(2)(3)(4)<プラスは(1)(2)(3)>の値はどのような意味があるのでしょうか?
- -A6-「その他の解析結果(参考)」(2)~(4)について解説します。
(2)全脳萎縮領域の割合(脳全体の中で萎縮している領域の割合):脳全体の萎縮の状態を表す指標です
(3)VOI内萎縮領域の割合(関心領域の中で萎縮している領域の割合):関心領域内の萎縮の広がりを表す指標です
(4)萎縮比(VOI内/全脳)(関心領域の萎縮と脳全体の萎縮との比較):関心領域の選択的な萎縮を表す指標です。
なお、「ブイエスラド」の結果のみでADの診断は行えませんので、十分ご留意ください。
- Q7
AD以外では内側側頭部の萎縮は見られないのですか?
- -A7-前頭側頭型認知症、脳血管性認知症、嗜銀顆粒性認知症、海馬硬化症などでも内側側頭部の萎縮が見られることが報告されています。
また、うつ病では海馬が萎縮するという報告もありますが、ADとの鑑別に関するエビデンスはありません。
- Q8
「ブイエスラド」の解析において54歳~86歳の対照画像と比較しているとのことですが、53歳以下の被検者でも解析は可能ですか?
- -A8-53歳以下のエビデンスは持ち合わせておりません。ただ、50歳未満の場合、萎縮に関して偽陽性を呈することがありますので、少なくとも50歳以上の被検者でご使用ください。
- Q9
「ブイエスラド」の解析において54歳~86歳の対照画像と比較しているとのことですが、被検者の年齢は何歳まで解析可能なのでしょうか(上限は?)。
- -A9-明確な上限を設けてはおりませんが、87歳以上の被検者で実施した報告はありません。結果が気になる場合は、86歳までの年齢でご使用ください。
- Q10
脳梗塞の影響はどう考慮されているのですか?
- -A10-「ブイエスラド」は明確な梗塞の見られる患者さんにおいては使用が適さないと考えられます。
灰白質画像に梗塞部位が含まれる場合(T1強調像で白質が黒く見えたら)処理できない可能性が高いと考えられます。
- Q11
「ブイエスラド」の正診率は?
- -A11-データ紹介ページに掲載しておりますので、データ紹介ページをご覧ください。
〇ブイエスラド アドバンス
・「内側側頭部VOI内萎縮度」に関するデータ紹介ページ
・「VOI間萎縮比(背側脳幹/内側側頭部」に関するデータ紹介ページ
〇ブイエスラド プラス
・「関心領域内の萎縮の程度」に関するデータ紹介ページ
- Q12
正診率とは?正診率はどうやって求めるのですか?
- -A12-正診率は以下のように算出される方法があります。
正診率=(真陽性数+真陰性数)/全検査数
- Q13
解析結果の数値は、全て灰白質のものであって、白質は含まないものと考えてよいのでしょうか?
- -A13-アドバンスでは白質解析結果として、白質の「全脳萎縮領域の割合」も表示されます。プラスでは、全て灰白質のものです。脳の灰白質を抽出処理した後の、灰白質におけるボクセル値から計算されたものです。
- Q14
「ブイエスラド」は、白質・脳脊髄液 も抽出されていますが、白質・脳脊髄液の評価は行えないのでしょうか。
- -A14-アドバンスでは白質の評価は行えますが、プラス版では行えません。プラスに移植しているSPM2では灰白質は厳密に抽出しているものの、白質、脳脊髄液は必ずしも厳密に抽出していないためです。
- Q15
同一被検者においてZスコアの値に誤差が生じるのはなぜか。
- -A15-解析結果の値は入力画像の影響を非常に大きく受けます。同一被検者、同機種、同一撮像条件で撮像した場合でも、次のような変動要素が存在します。
・姿勢
・アーチファクト(眼球のモーションアーチファクト、血管からのフローアーチファクト、磁化率アーチファクトなど)
・画像のランダムノイズ など
同一被検者による値のバラツキについては以下の論文で、「有意な委縮をZスコア2.0と考えた場合に0.2程度の変動は問題とならない」とあります。
※早期アルツハイマー型痴呆診断支援システム(VSRAD)における撮像方法の検討
・執筆者:後藤政実 他
・雑誌名:日本放射線技術学会雑誌(Vol.62 No.9 、p.1353-1358 、2006年)
- Q16
同一機種、同一被検者での値の再現性を教えてください。
- -A16-同一被検者(健常人)が同じMRI装置で撮像し、撮影日を変えた測定値間で、
(1)VOI内萎縮度-----0.01+0.08(平均+標準偏差)
(2)VOI内萎縮割合---0.2+1.9%
(3)全脳萎縮領域----未報告
(4)萎縮比----------0.01+0.87
と変動するという報告があります。
※出典:松田博史 ここが知りたい認知症の画像診断Q&A p145
- Q17
PCによって「VOI内萎縮度」(「関心領域内の萎縮の程度」)などの値が若干異なりますがなぜですか?
- -A17-処理用PCのCPUによって計算方法が異なるため、ごくまれに計算結果に若干の相違が出ることがあります。サンプルのDICOM画像で同じ結果が出るかご確認ください。
- Q18
読影結果より値が低くでますが、なぜでしょうか。
- -A18-「ブイエスラド」は相対的な萎縮の評価を行っております。そのためZスコアが低く出るのは、関心領域から離れた部位に強い萎縮が表示されるケースが考えられます。
- Q19
撮像画像を確認したところ、海馬と思われるところより少し後ろが青くなっている。萎縮の位置が少し後ろにずれることがあるのではないですか?
- -A19-萎縮の位置が単にずれて出力されるという現象は、これまでのところ確認されておりません。実際にあった事例では、元画像をご確認いただいたところ、磁化率(サセプタビリティ)アーチファクトに起因していたものがあります。
磁化率アーチファクトや画像のムラによって、信号値が周囲と比較して高くなっている(白くなっている)領域は、灰白質抽出処理の際に白質と見なされるため、灰白質としてはその部分が抜け落ちて、Zスコアが異常に高くなる場合がありますのでご注意ください。
なお、被検者脳表示により、萎縮表示と実際の萎縮と重ね合わせて確認することができますので、ご確認ください。
- Q20
処理が終わった段階で後頭葉の部分が真っ赤になります。原因として何が考えられるでしょうか?
- -A20-MR画像において後頭葉の萎縮が確認できない場合、途中の灰白質抽出処理に失敗している可能性が高いと思われます。途中処理の灰白質抽出結果をご確認ください。また、被検者脳表示で入力画像の萎縮と「ブイエスラド」の萎縮表示をご確認ください。
なお、灰白質抽出に失敗する原因については、以下が考えられます。今一度、入力画像をご確認下さい。
・灰白質と白質のコントラストが悪い
・画像にムラがある
・S/Nが好ましくない
・アーチファクトがある
・梗塞などによりT1強調像で低信号領域が広くみられる
・脳室がかなり拡大している
・顎があがっている(自動補正フローにより回避できることがあります)
- Q21
スライス一覧画面で脳が表示されません。
- -A21-背景MRI画像が正しく設定されていないことが考えられます。メニューバーから、[ツール]→[処理結果表示設定](プラスは[ツール]→[Zスコアマップ表示設定])で表示される「背景MRI画像[標準脳]」で、single_subj_T1.nii(標準設定)(プラスは「single_subj_T1.img(標準設定)])に設定いただき、お試しください。